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「森崎書店の日々」〜神保町を知らないと、人生の半分を損する〜
category: 邦画
JUGEMテーマ:映画 


映画館 ☆☆★★★


レストランで食事中、貴子は恋人の英明からこう告げられた。
「俺、結婚するんだ。(略)俺と彼女がだよ」
てっきり自分こそ恋人だと思っていたのに、二股どころかセックスフレンド扱いだったことに気づく貴子は、会社も辞めて引き篭もってしまう。
自分の部屋でこんこんと眠り続ける貴子の下に、叔父のサトルから電話がある。サトルの営む古書店の二階に引っ越してこないか、というのだ。
渋る貴子だったが、家賃も光熱費もタダだと説得され、神保町の森崎書店にやってくる。
全く本を読まない貴子にとって、神保町は異郷。やってくるお客さんは変な人だったり、本は売れても百円だったり……。
こうして、貴子の森崎書店の日々が始まった。


もうちょい上映があるのでネタバレ注意。

原作未読。神保町が好きだから、という理由だけで見に行ったような作品。
久しぶりに映画見ながら寝そうになった
ゆったりとした空気が売りのこの映画、いやこれ、ゆったり通り越して、まったりしすぎている。
元々「日常」というぐらいだから、淡々としたゆったりとした心地よい空間を味わう作品で、それでいいはずなのだが、いかんせん、「日常」すぎる。主人公がただ本を読んでるのがおもしれーのかよ?
せめて、こういう本のこういう一節、でも読んでくれたらその本に興味も持てたろう。でも、これじゃただの風景だ。
主人公の貴子が読書に目覚め、古書店巡りをするシーンは完全にドキュメンタリー。
その貴子を演じているのは、映画初主演の菊池亜希子。芝居自体は初めてではないそうだが、この人がちょっと上手くない。
それでも、傷つき、気だるそうにしている貴子の雰囲気はよく出ているし、その手の細さはいっそ病的で、食事もろくに取っていなかったんだろうと思わせていい。台詞回しは自然だが、彼女の場合はやや棒読みに近い。素で喋っているんだろうが。でも、貴子はそれでいいのか? いいのかもしれない。
対して、叔父のサトルを演じる内藤剛志は、他の作品でのハイテンションぶりを封印し、静かに、自然な演技を見せている。
友人となる田中麗奈(妙に影が薄く、一瞬分からなかった)も、きたろうも、岩松了ですら、こういう人いるよ! ってな自然具合だ。
実のところ、一番面白いのは岩松了演じるサブで、自分の好きな作品について語りまくる様子はオタクっぽくて実に良い(神保町に集まる人間は、多かれ少なかれオタクだ。その言葉に恥じることはない。むしろ誇るべきだ)。
まあこれは、経験値の差としか言いようがなく、ひょっとすると菊池亜希子はいずれ大層な役者になるのかもしれないが、田中麗奈が貴子を演じていたらどうだったろう、と思ったりもする。

演出にも問題なくはない、という気もする。冒頭いきなりフラれ(しかも自分がセックスフレンドだった事実に気づく)た後、貴子は会社に行く。トイレで話し声を聞きながら、英明がコピーを直してくれるのを見ながら、傷は深くなっていく。
で、会社を辞めるのだが、ここが弱くて、英明と彼女が仲良く喋っていたり、貴子が友人とその話をする羽目になったり――なんてベタだが、そんなシーンがあれば分かりやすかった。あるいはいきなり電話があって、「会社を辞めた」事実が述べられればテンポがいい。
この辺から既にまったりしちゃってるんだよな。
万事がこの調子で、まったり――もっと悪く言えば間延びしている。つまりは、貴子がこの「日常」で何か得て、復活する様子がちっとも分からないのだ。サトルが貴子のために動いてくれた(それだけは分かる)、その事実だけでやる気になったように見える。――まあ実際は、それまでの積み重ねがあってこそなんだろうが。
文章ならその積み重ねを読んでいけばいいが、映像だと分かりやすく見せてくれないと、それはただの風景で終わってしまう。……地域映画でもあるらしいけど、こういうもんなのかねえ? 自主制作の延長みたいだ。

サトルにフラれた話をするシーンだけは、演出も演技もいい。
特に貴子が、話そうとすると泣いてしまうのでそれを抑えている、だから喋れない、といった感じの演技はいい。うん、そういうことってある。
それに対し、サトルが急かすでもなく、まあ座れと勧めるのもいい。
問題はその後で――どうもすっきりしないんだよな。
現実世界では「謝らせてやろう!」が関の山だろうが、いっそ「殴ってやる!」ならスカッとしたのに。或いは冒頭の映画を引っ張ってきて、「『ブレードランナー』見た? あなたと婚約した後で、この人、私と映画を見てセックスしようって言ったのよ」ぐらい言ってくれたら、溜飲が下がったのに。
まあ、貴子の性格では無理だろうが、それぐらいやってくれたら、貴子も成長したんだなーと思えたんだがなー。
考えてみれば冒頭の貴子は一方的に喋りまくっていて、ちょっと嫌な感じがする。英明が迷惑そうに見えたぐらいだが、すぐに「あ、俺結婚するから」「今夜はどうする?」と訊いちゃうあたり、この男は貴子以上に嫌な男だと判明。
作中、実は一番濃かったのがこの英明だった。実に嫌な男だった。それだけに、こいつをそのままにしておくのは、不満である。(その後、ちゃんと結婚できたかは不明だが)

テレビでやったら、途中で替えてしまいそうな映画。でも原作は読みたい。
それにしても、神保町の古本屋で家賃も光熱費もタダなら、越すわ! 二つ返事で行くけどな!(子供の頃の夢は、物置に自分だけの本の部屋を作ることでした)
作中の古本祭りは去年のもの。確か行った気がするので、映画そっちのけで自分を探してしまったのはここだけの話。





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2010/12/28 8:09 PM, from soramove
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2015/03/04 1:31 AM, from 日々の書付
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